「寂しい絵だね」 顔を寄せて絵を見ていた千尋は突然声をかけられて、 跳ねるようにして顔をあげた。 「これは私だ。なにもない、真っ暗な、私の世界」 そこには、ひとりの少年が立っていた。 白い、見慣れない着物を着た、絵を見上げる横顔のラインの整った少年であった。 肩の上あたりですっぱりと切り揃えられた艶やかな黒髪に、 不思議な色を湛えた眸がアンバランスな印象を醸し出している。 時代錯誤もいいところの姿ではあったが、千尋は別段不思議には思わない。 だって、彼はいつでもこの着物だもの、真っ白なこの着物だから……と。 「住んでるところがこんなに真っ黒なの? それは寂しいよ?」 「あぁ、寂しいよ。けれども、誰かを引きずり込むわけにもいかないから」 寂しいと口にする口調は、幼い千尋にもわかるほどに寂しさを含んでいて。 落ちついた物言いが、更に寂しさを際立たせていて。 「わたしが行けば寂しくない?」 絵を見上げる少年の横顔は、こちらが泣きたくなるほど寂しげで。 けれども少年はものすごい勢いで千尋をみやり 「そんなことを言ってはいけない!」 と怒鳴るように。 千尋はびくりと震えた。 『流 ―Ryu― 第四話 ヤ(夜)』より いつもお越し頂いているLisa様よりお手紙で 個人的にド暗いと思っている書下ろし本 『流 ―Ryu―』のイメージイラストを頂きました! 細かな所まで描写通りにしてくださって感無量です! 千尋嬢のサマーワンピースも、細い肩も、 ハクの見上げる表情も想像通りです! 本当にありがとうございました! なのにあんまり綺麗に取り込めなくてすみませんでした〜〜(泣)。 |