――Der Alptraum――

Written by Oboe



蒼く晴れ渡った空
国中に響き渡る喜びの歌
明るい笑い声 嬉しそうなざわめき
(祭り?・・・いや違う・・・な)

心の痛みと引き換えに俺は理解を得る
白いドレスに身を包んだ「彼女」が
もうすぐ民の前に姿を現す
生涯を誓った相手と共に

黒い服に身を包んだ俺は
両手に顔を埋めたまま動かない
床には祝福の白いバラの花束
俺の心のようにじっとうずくまる

「彼女」の誕生日の度に美しく咲き誇っていたバラ
その時の記憶がトゲのように俺の心を苦しめる

◇ ◆ ◇

「ショセン ムスバレヌ アイテヲ ナゼ マモル」
(・・・)

「カノジョハ 『王になる者』ダロウ? オマエトハ ケシテ ムスバレヌ」
(・・・うるさい・・・!)

「イッソ コロシテシマエバ イイ。コロシテ オマエノ モノニ スルガ イイ」
(!!)

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

沸き起こった歓喜に近いほどの苦しみに俺は目を覚ます

俺の魔力と心を蝕み、喰い続ける「死の精霊」
奴と俺には共通した想いがある
「彼女」を手に入れたいと
願ってやまない

時々、分からなくなる
これほどまでに「彼女」に会いたいと思うのは奴なのか、俺なのか

「他の男のものにするぐらいなら、殺せ・・・か」
つぶやきと共に、「その」「彼女」の姿が目に浮かぶ
(・・・アカク ソマッタ シロイ ドレス・・・ウツクシイゾ オマエノ モノイワヌ ハナヨメハ)

そのおぞましさに(ウツクシサニ)俺は頭を振る
(「彼女」を傷つけるぐらいなら、俺が死んだほうがましだ)
「デハ シヌカ?!」
奴の誘いはより巧妙になってゆく・・・







俺は理解している
(リカイシヨウト 「努力」シテイル)

「彼女」は王になる者
(オマエトハ チガウ世界ニ イキルモノ)

国を統べる者
(ホントウハ クニナド「どうなってもいい」ノダロウ?)

民に愛される者
(イチバン カノジョヲ 愛シテイルノハ 「だれ」ダ?)

その傍らに俺は許されない
(ナゼ 「許され」ナイ?!)

◇ ◆ ◇

時間がない
俺が奴の誘惑に打ち克てる内に
奴が「彼女」を手に入れる力をつける前に
俺は静寂の石を手に入れる

俺が「彼女」の未来を壊してしまわないように

■ ■ ■

「ムダダ」

「タトエ 『静寂の石』ヲ ツカッテモ」

「タトエ ワレカラ ノガレテモ 」

「オマエハ オマエカラハ ニゲラレナイ」

■ ■ ■

その通りだ

俺は気づいている
「彼女」が俺を必要としなくなった時
俺の中の何かが壊れ
死の誘いが俺の中で目を覚ます

俺は 俺の心からは 逃れられない

「ワカッテイテ ナゼ ワレカラ ノガレヨウトスル?」







今はただ
傍にいたいから
(恋や愛が見えぬほど「彼女」が幼いうちは)

今はまだ
支えていたいから
(俺の手を「彼女」が必要としているうちは)

「彼女」の後ろに立つことを
俺が許される限りは
俺は俺の内なる「死の誘い」を抑えつづける

それは
限りなく幸せで
限りなく苦しい甘い「夢」の時間
(モウ オワリガ チカイ「ユメ」ノトキ)

「夢」の終わりは
喜びの声が国中に響き渡るとき

俺の心に刺さったままの白いバラが
そのとき赤く染まることを
ローラ、お前が知る必要は無い
今の「この」俺をお前が知る必要が無いように・・・

「この」俺から開放されたとき
「この」死の精霊から逃れられたとき
俺はお前のもとへ走る

・・・「夢の続き」を 見るために
(「ユメノオワリ」ヲ シルタメニ)




あとがき>>>>